その時──

「!?」

「! だからっなんだよ!」

 突然、時弥が杜斗の右腕の服を掴んでゆすった。

「いっ……いいい、今っ外に何かっ」

「あん?」

 杜斗は外に上半身を出し懐中電灯を照らす。

「何も無ぇじゃねぇか」

「でっでも、見たんだ……」

 視界の端に扉の前をスゥ~っと横切っていく影を……

 彼はそれを必死に身振り手振りで示すが杜斗はそれに怪訝な表情を浮かべて信じようとはしない。

 しかしすぐハッとして時弥に笑顔を向けた。

「お前、幽霊見たって事か?」

「ゆっ幽霊!?」

 杜斗は残念な顔をして手術室から出て行く。

 慌てて時弥はそれを追いかけた。

「チェ……いいなぁ」

「よくなんか無いよっ」

しばらく歩き回り小児病棟の前で足を止めた。