「……おい。どうする?」

 青年が小さな声でつぶやく。

 夜だというのに野球帽を被りTシャツに短パン。

「やるしかねぇだろ……」

 もう1人の青年が答える。

 似合っているとは言い難いチノパンにぶかぶかのシャツ。

 ここは廃病院の地下──霊安室で彼らは会話していた。

 周りには5人ほどの青年と少年たちが手に手に注射器を持っている。

「さあ、これからドラッグを打つぞ!」という時に声がして何人かが様子を見に行った。

 しかし誰も戻ってこない。

 まさか外に警察がいて捕まったんじゃないだろうか……? そんな恐怖が脳裏を過ぎった。

 こうなれば抵抗してでも逃げるしかない。

 青年たちは決意した。

 ここは劣化ウランの取引でも、麻薬の取引でもなく……ドラッグを打ちに来る青年たちのたむろ場所だったのだ。

 青年たちはゆっくりした足取りで上に続く階段に向かった。