カチャリ……

「!?」

 時弥は聞こえる音にビクリと強ばり、杜斗の服をギュッと掴んだ。

「なんだよっ」

「いっ今、後ろから音が……」

 言われて杜斗は振り返る。しかし懐中電灯を回しても何も見えなかった。

「気のせいだろ」

「そ……そうかなぁ」

 開かれたドアを通り病室を覗いていく。

 1階……2階……3階……と、1つずつ階にある病室を見て回った。

 それほど大きくは無い廃病院だが、ゆっくりした歩調にさすがに時間がかかる。

「! ここにも入るのか?」

「当り前だろ」

 時弥は目の前の2枚扉に身震いした。

 左側は留め金がかなり緩んでいて傾いている。

 大きな丸いライト、そこは手術室。

 外からも見える手術台が潰れた病院らしく2人を手招きしているようにぼんやりと白く浮いて見える。

 割れたガラスを踏みしめて1歩、体を滑り込ませた。

 手術道具が乗せられた銀色のトレイ。緑色のシート……どれを見ても気持ちのいいもんじゃない。

「……」

 時弥はゴクリと生唾を飲み込んだ。

 杜斗はじっくりと見られる機会を得たかのようにゆっくりと、さして大きくもない手術室を回る。