「お話中、
申し訳ございません」



萌香の事務所の
社長、真鍋さんが現れたのだ。


低姿勢で
深々とお辞儀をする真鍋さんは、

グレーのスーツに
水色のネクタイを絞め、

病院に来た
医療機器の営業マンにも見える。



「あなたは?」という警察が声に

「このたびは、
うちのタレントの件で
ご迷惑をおかけしました」と

名刺を差し出した。



「うちのタレントの写真が
盗撮されたことが原因で、

彼が男性を追いかけ、
事件が起きたと連絡が入り、
こちらに伺いました」



淡々と話す真鍋さんを
呆然と見るしか出来なかった。



「先ほど、
治療が済んだ男性と
うちの顧問弁護士が話し合い、

示談ということで
和解が成立しました。

もし
男性側が訴えるということであれば、
こちらも盗撮は
肖像権の侵害になると伝えております」



警察官同士
顔を見合わせ、

目で合図を送る。


そして
年配の警察官が口を開いた。