救急車の中で、

点滴をしている男を
眺めていると、

事故の状況を問われた。



俺はありのままを答えた。


彼女と
芝生で寝ている時に、

盗撮され、

写真を返せと追いかけて、

襟元を掴んだら

男が倒れて、
頭を打ったと。


ただ、
その彼女が
永井萌香という
グラビアアイドルだと言うことは明かさなかった。


萌香の未来を
壊してはいけない。


それが
今の俺に与えられた
責任のように思った。



「彼女は
どこに行ったんですか?」という質問には、

先に帰らせたと答え、

それ以上話すことはなかった。



病院に着くと、
警察を呼ばれ、

再度事情徴収が行われた。


盗撮した男を
捕まえたとは言え、

俺が起こしたのは傷害事件に当たる。



俺は
このまま犯罪者になってしまうのか? 



そんな疑問が浮かび、
額から
一滴の脂汗が流れ落ちた。



待合室の隅のほうで
警察と話していると、

「すいません……」と
声が聞こえた。


俺は「あっ」と声を漏らした。