その時、

「おい!! 
人が血を流して倒れてるぞ」と

声が聞こえ、

周りが一気にざわめき始めた。



「救急車を呼べ!!」という声に、

あたしたちは顔を見合わせた。



「……萌香、逃げて」



淳平くんは
大きく見開いた目で言った。



声も震えている。



「……え、
何、言ってるの?

あたしのせいで
こうなったんだから」



淳平くんのシャツを掴み、

声を震わせた。



「萌香が問題を起こしたら、

今まで努力したことが
無駄になってしまう。

……いいから、逃げて!」



淳平くんは
あたしの腕を振り払い、
肩を押した。


そして
動こうとしないあたしに

「早く!!!」と怒鳴った。



あたしはその声で

芝生を走り出し、

レジャーシートの
上の荷物を持つと

無我夢中で走り出した。



風なんて感じられない。



太陽はどこにあるの?



草木の匂いなんて、どこに行ったの?



何も感じることが出来ない。




ただ、ただ……


夢中で走るしかなかった。