「何しに来たんだよ」



広い体育館に、
淳平くんの声が響いた。



「会いたかったから……来た」


ギャラリーから
声を上げるあたしに、

淳平くんは
クスッと笑いながら
下を向いた。



あたしは
急いで階段を下り、

体育場のドアを開ける。


明かりが
一面広がるコートの中に、

ハーフパンツとTシャツを着た淳平くんが立っていた。



スリッパのあたしは、

パタパタと
情けない音を立てながら、

淳平くんに近づくと、

淳平くんは
持っていたボールを

1バンドさせて、あたしに投げつけた。


あたしの手元に
ちょうど良い力強さで届く。



ボール越しに
感じる淳平くんの温もり。


ギュッと
抱き締めたくなる。



「こっちにパス!」



手を上げる淳平くんに、

あたしも
1バンドさせて

ボールをパスした。


ボールを
受け取った淳平くんは

ゴールへシュート。


リングに
またシュッと音を立てて入った。



「今日はごめんね……」



ボールが床に転がり、

ドンドン……と
小さな音へ変わって行く。



「気にするなって。
萌香はこれからもっと頑張らないと」



淳平くんは
ボールを拾うと、

こちらを振り向いた。