六本木の街を抜け、
高層ビルが
いくつもあるオフィス街にやってきた。
「淳平くん、
今日は突然こんなことになってごめんね」
信号が赤で止まったとき、
真鍋さんは
後部座席に体を向け、
淳平くんに声をかけた。
真鍋さんから
“今度、
淳平くんに会わせて欲しい”と
言われていたが、
こんな形で
会わせることになって、
何だか気まずい。
淳平くんは
「いえ」と一言だけ答えた。
「この辺の喫茶店で
待っていてくれるかな?
あとで、
二人のこと送って行くから」
「わかりました。
そこの喫茶店で待っています」と
淳平くんはドアを開け、
「後で」と
あたしに告げると、ドアを閉めた。
車はまた走り出し、
真鍋さんは運転しながら
「彼、怒ってた?」と言った。
「いえ、怒ってはいないです。
ただガッカリは
していたと思います……」
「そうだよね……。
せっかくのデートだからね。
あと萌香ちゃん?
今は良いけど、
これから
メメディアに出る機会が増えたら、
サングラスとかするようにしてね。
あと帽子をかぶるとか」
「そうですね。
実はさっき、
渋谷でスカウトされました」
「え?何て言ったの?」
「コットンキャンディに
所属しているって言ったら、
千葉優衣のところかって言われました。
それと……、
アイドルがデートして良いのかって、
嫌味も言われました……」
「そっかぁ」と
息を漏らすように言う真鍋さんは
それ以上、
何も言わなかった。


