龍の女神となるべき姫【上】



だけどそいつは、また何も言わずに背を向けた。




為す術もなく、その背を見送っていると。




「……っ!!これはいつ返せばいい!?」




悠基が、ハンカチを結ばれた右手を軽く挙げながら、そいつに叫んだ。




そいつは、立ち止まって顔だけこちらに向けると。




『あげる!!今日の記念に』



と言った。




そして最高の笑みをひとつ残すと、颯爽と去っていった。