だけどそいつは、また何も言わずに背を向けた。 為す術もなく、その背を見送っていると。 「……っ!!これはいつ返せばいい!?」 悠基が、ハンカチを結ばれた右手を軽く挙げながら、そいつに叫んだ。 そいつは、立ち止まって顔だけこちらに向けると。 『あげる!!今日の記念に』 と言った。 そして最高の笑みをひとつ残すと、颯爽と去っていった。