龍の女神となるべき姫【上】



だけどそいつは悪戯っぽく微笑むだけで、答えなかった。



そして、なぜか悠基の目の前まで来た。



みんなが不思議そうな顔をしている中、そいつはどこからかハンカチを取り出して、悠基の手をとった。




「っ!?」




そいつは驚いて固まってる悠基を気にせずに、悠基の右手にきゅっとハンカチを結んだ。




『何にもないからちゃんと手当てできないけど、そのままにしとくよりましでしょ』



「……?」




悠基が不思議そうに右手を見つめると、そいつは呆れたように、



『はぁ。自分のことも大切にしなよね』



と言った。




誰も気づかなかったけど、あいつらを何度も殴ってた悠基の手からは、血が出ていた。