だけどそいつは悪戯っぽく微笑むだけで、答えなかった。
そして、なぜか悠基の目の前まで来た。
みんなが不思議そうな顔をしている中、そいつはどこからかハンカチを取り出して、悠基の手をとった。
「っ!?」
そいつは驚いて固まってる悠基を気にせずに、悠基の右手にきゅっとハンカチを結んだ。
『何にもないからちゃんと手当てできないけど、そのままにしとくよりましでしょ』
「……?」
悠基が不思議そうに右手を見つめると、そいつは呆れたように、
『はぁ。自分のことも大切にしなよね』
と言った。
誰も気づかなかったけど、あいつらを何度も殴ってた悠基の手からは、血が出ていた。

