静かになった路地で、小柄な男がこっちを向いた。
そのときちょうど風が吹いて、そいつの長い髪が舞い上がる―――
……長い髪?
ってことは。
「「女!?」」
秋都と僕の声が重なった。
悠基と智は、声こそ出さなかったけど目を見開いている。
『あーあ。ばれちゃった。
慎司に怒られるかな?
でも頑張って低い声出して、ばれない努力はしてたし。
ま、いっか』
そう呟いた小柄な男―――いや、女は、少し高くなったものの、変わらず透き通った綺麗な声をしていた。
僕たちを見て甲高い声を出す女共と違って、いつまでも聴いていたくなるような声。
「……君は何者?」
今、多分11時は過ぎているはず。
真っ暗でよく顔が見えないまま、僕はそいつに聞いた。

