龍の女神となるべき姫【上】



静かになった路地で、小柄な男がこっちを向いた。



そのときちょうど風が吹いて、そいつの長い髪が舞い上がる―――



……長い髪?


ってことは。




「「女!?」」




秋都と僕の声が重なった。



悠基と智は、声こそ出さなかったけど目を見開いている。




『あーあ。ばれちゃった。
慎司に怒られるかな?
でも頑張って低い声出して、ばれない努力はしてたし。
ま、いっか』




そう呟いた小柄な男―――いや、女は、少し高くなったものの、変わらず透き通った綺麗な声をしていた。



僕たちを見て甲高い声を出す女共と違って、いつまでも聴いていたくなるような声。




「……君は何者?」




今、多分11時は過ぎているはず。



真っ暗でよく顔が見えないまま、僕はそいつに聞いた。