龍の女神となるべき姫【上】



暗闇に光る銀色の物体―――ナイフが背後で振り上げられていた。



ナイフは躊躇いなく、小柄な男へと降り下ろされる。




やばい……!!



いきなりすぎて誰も動けない。






―――が、そいつは顔色ひとつ変えずにひょいっと避けた。



その拍子にフードが外れたが、全くの無傷なようだ。




そいつは、ナイフを持つ男の手を掴みながら、目を真っ直ぐに見据えて語りかけた。




『いくら負けて悔しいからって、こんなもん持ち出すんじゃねーよ。
誰だって負けることはあるんだ。
それを認めてこそ、人は強くなれる。
今のお前じゃ、絶対嵐龍を抜かせねぇ』