龍の女神となるべき姫【上】



『今まで嵐龍のために、何を言われても我慢してたんだろ?
今日だけじゃなく、昨日も一昨日もその前も』




どうしてわかるんだろ?




ここでキレたら嵐龍の評判が悪くなる。


ありもしない噂を、また広められる。



そう思って我慢してきた。




『その思いをこの一瞬で踏みにじんのか?
我慢してたのはお前だけじゃなく、他の3人もなんだぞ?』



「……。そうだな。
悪ぃ。お前らは必死で我慢してたのにな」



「何言ってんねん!!
悠基のおかげですっきりしたわ」



「これ以上、嵐龍をなめられたら困るしね」



「いい見せしめになったでしょう」



「……。ふっ。さんきゅ。
誰だか知んねぇけど、お前も。
お前のおかげで大切なことに気づけた」




悠基が僕たちや小柄な男に礼を言って、和やかな空気が流れたそのとき―――









「……危ねぇ!!」