幸せという病気

「今日、親父に竜司紹介してきたよ」


病室で腰を下ろし、武が今日の事を話し始めると遥は少し心配そうに聞き返す。


「・・・お父さんなんだって?」

「竜司を殴らせろってさ」

「殴ったの!?」

「・・・いや、殴る気はなかったと思う・・・本当に殴りたいなら、いちいち俺に殴らせろなんて聞かねぇよ」

「そっか・・・」

「でも・・・あの親父の目・・・なんか気になるんだよなぁ・・・」

「どんな目?」

「・・・どんなってわかんねぇけど、何か覚悟したような目だったな」

「よくわかんない」

「まぁいっか。で、いつ籍入れるの?おまえら」

「さぁ・・・」

「・・・ちゃんとしようよ・・・」


武は少し呆れている。

すると、遥がすみれについて聞き出した。


「お兄ちゃん、すみれ先生とは連絡とってるの?」


すみれの名前を聞くと、武は顔が曇る。



「いや・・・今はとってないよ・・・」


「どうして?」


「どうしてって・・・踏み込んじゃいけないから・・・」


「先生を思って、そうしてるの?」


「まぁ・・・」


「・・・お兄ちゃんさぁ・・・素直なように見えて素直じゃないよね・・・」


「どうゆうこと?」


「素直って何通りもあるけど、すみれ先生の前じゃ、お兄ちゃん素直じゃないと思う・・・かっこつけてるでしょ?」


「・・・そりゃまぁ好きだし・・・」


「もともとかっこ悪いんだからさぁ、何かっこつけてるの?・・・そんなのいらないよ・・・」


「・・・」


「すみれ先生も、かっこつけたお兄ちゃんしか知らないはずだよ・・・?もっとホントのお兄ちゃんを知りたいって思ってるんじゃないのかな・・・見栄とか、変なプライドとか、かっこつけた優しさ捨ててみれば?お兄ちゃんも楽になるし、先生だって・・・」


「そのせいで先生を病気にさせたら俺・・・」