幸せという病気

それから一ヶ月半程経ち、竜司は婚約を武に報告に向かった。



伊崎家――。



「結婚ねぇ・・・早いんじゃねぇか?」


武がそう言うと、竜司は正座しながら答える。


「・・・いや、でも今かなって・・・」

「まぁ別に早いか遅いかだしな。ただ、ほら。俺は親じゃないからさ」

「親みたいなモンじゃないですか」

「俺らの親は牢屋にいるよ」

「・・・」

「つれてってやるからスーツ持ってこい」

「・・・はい」


そう言われた竜司は家までスーツを取りに帰る。

そして、武と竜司は二人で父親のもとへ向かった。




待合室で・・・。


「よう。武」


武に話しかけてきたのは、茂だった。


「何してんだよこんなとこで」


武がそう聞くと、茂は首をひねりながら答える。


「おまえのお父さんに面会だよ」

「・・・知り合いなのか?」

「言ってなかったか?あの時手錠かけたのはワシだからな」

「・・・そうだったのか」


そこへ、父親がやってきた。


「波川さんじゃないですか。武も・・・」

「悪い。子供の面会の邪魔しても仕方ねぇからな。今日は帰るわ」


茂がそう言い、今日の面会を遠慮すると武がそれを止める。


「いいよ。先に話しなよ。なんかあるんだろ話が。その後でいいから」


そう言いながら武が竜司を連れて外に出ると、それを見て茂はゆっくりと父親に話し始めた。


「大人になったなぁ。当時は十七だったからな」

「そうですね・・・」


茂にそう言われ、少し笑顔になりながら父親が答える。


「最近は幸せ病っていってな・・・幸せになると死んじまう病気があるんだ」


「知ってます」


そして二人は、腰掛けながら病気について話し始めた。