第五章 混乱




伊崎家――。


その日、武は家に着くなり死んだように眠った。


「どこ行ってたんだろお兄ちゃん」

「さぁね・・・ずっと寝てなかったんでしょ・・・?」


遥がそう言うと、祖母は体を心配する。





そして武の携帯が鳴る。






その時、武は浅い睡眠状態にいた。


――お兄ちゃん、お兄ちゃんっ――


遥が武を呼ぶ。



《夢か・・・》



――お兄ちゃんってば!――



《うるせぇな・・・寝かせろよ・・・》




まるで夢ではなく、遥と話しているかのような感覚が続く。




―――電話だよっ!?――






《電話?・・・あっ・・・すみれ先生?》






「すみっ・・・」



武が飛び起きると、


「何寝ぼけてんの?ほら早く、鳴ってるよ?」


と、冷静に遥が携帯を渡す。


「あぁ・・・」


電話はすみれではなく、茂だった。



「なんすか?寝てないんですよ・・・」



武が電話口でそう言うと、茂はいつもより低い声で話す。




「今日は動くなよ?家族の側にいろ・・・」




「えぇ?」





武が寝ぼけ眼でまったく理解出来ずにいると、茂はひきつった声で言った。






「見てねぇのか・・・テレビつけてみろ・・・」