「あれ?遥。武達は?」

「旅にでたよっ」

「旅?」


遥の答えにあっけに取られたような顔で、祖母がそう聞き返すと、


「まぁ・・・男にしかわかんないんじゃない?」


そう言い、遥はダイニングにあるソファーに腰掛け笑って答えた。

それを聞き、祖母は手ぬぐいで濡れた手を拭きながら遥に近寄る。


「ありがとうね、遥・・・墓参り。苦労ばっかかけて・・・」

「ん〜ん。苦労なんて思ってないよ?」


申し訳なさそうに祖母がそう言うと、優しい顔で遥はうつむきながら答える。



その五分後。



泥だらけになりながら、武と香樹が帰ってきた。
すると遥は二人を見るなり、玄関口で武と香樹を叱る。


「あっ!ちょっと泥だらけじゃん!!二人ともそこで服脱いで風呂っ!」

「遥さん・・・すいません」


怒る遥に、武が冗談まじりで謝る。


「お姉ちゃん!・・・ほらほらぁ〜」

「ん?・・・あっ!香樹ぃ!!」


そして香樹が面白がり、遥にくっつき虫を付けようとすると、遥はそれに対し真剣に怒った。


その横で、そんな孫たちの姿を見ながら祖母は嬉しそうに笑っていた。


父親がいなくなり、母親を亡くしても、素直にそして元気に育ってゆく孫達がただ嬉しかった。


やがて遥に叱られた為に武と香樹は、その日一番風呂に入り、今日一日分の遊びの汚れを流す事にした。


「香樹〜。学校おもしろいか?」

「うんっ」

湯船につかりながら武が香樹にそう聞くと、香樹はタオルを泳がせて遊びながら、かん高い声で答える。

続けて武が伺う。


「そうかぁ。もう友達できたらしいなぁ〜」


すると香樹は新しく出来た友達を思い出しながら、その人数を指折り数えだした。