「だから・・・そんな風に言わないで・・・」
そして遥は医師に精一杯頭を下げ、すがるようにお願いをした。
「最後まで諦めないであげて下さい・・・お願いします・・・」
その言葉で・・・室内は静かになった。
担当医は数秒後、遥に対し「わかりました」とだけ言葉をかけ、すみれの病室に戻る。
そして武の命は、夢の中ですみれと交われないまま、死へと向かいゆっくり歩み始め、暗闇で最後の夢を見始める。
「おい。武・・・」
その声は低く、武の脳を振動していた。
「何してんだ・・・?早く返事しろ」
武が最後に見た夢は・・・。
弘樹だった。
「・・・弘樹・・・?おまえ死んだんじゃねぇのか・・・」
「バカ。おまえも今死にそうだから、こうやって話し掛けてんだろ」
「あぁ、夢ん中か・・・ってか・・・まだ死んでねぇのか俺」
「俺に挨拶してから死んでもらわねぇとなぁ。ほらっ俺は先に死んだ、いわば先輩だからよ」
「何言ってんだおまえ」
「武・・・おまえまだ生きてんだぜ?」
「だからなんで・・・?おっ。これが三途の川だな・・・?」
「バカだなおまえはホントに」
「なんだよ・・・」
「俺が、ひと夢見させてやろうって言ってんだよ」
「・・・は?」
