「あっ。おっさん?」
「・・・武か?」
武の声を聞き、茂は驚いて聞き返した。
「あぁ。なんだよ、生きてんのか?みたいなその感じ」
「おまえ・・・意識戻ったのか?」
「まぁほんの一瞬だけな・・・てか親父んとこいるんだろ?」
「あぁ・・・今、危篤の状態だ・・・おまえ今・・・」
「悪いけど、すみれに代わってほしいんだ」
「・・・待ってろ」
そう言い、茂はすみれを外へと呼び出し、武からだと携帯を渡す。
そしてドキドキしながらすみれは電話を代わった。
「・・・もしもし」
「俺だけど」
「うん・・・」
すみれは込み上げる涙を必死でこらえる。
「すみれ・・・赤ちゃん、元気に産んでくれよ?」
それを聞くと、すみれは言葉が出ない。
武が続ける。
「男の子かなぁ」
「・・・」
「・・・女の子かなぁ」
「・・・」
「まぁ。どっちにしても俺らの子だから・・・可愛いはずだよね」
「うん・・・」
「すみれ・・・」
「・・・はい」
すみれが小さい声で返事をすると、武は言葉を発する時間を探す。
「・・・あのさ・・・ちょっと出掛けてくるわ」
武・・・。
私、この瞬間を・・・。
「・・・いつ・・・帰ってくるの・・・?」
ずっと、ずっと・・・。
「・・・ちょっとだけ・・・遅くなるかもしんねぇ」
恐れてた・・・。
「・・・そう・・・」
