幸せという病気



そして一方の父親のもとでは祖母が静かに、その苦しむ姿を見ながら語りかける。




「あんたの事だから・・・きっと子供達の事考えてるんでしょ?」



すみれは祖母のその姿を見て、自分のお腹にそっと右手を置いた。



「・・・本当は優しくて、とっても良い子だったね・・・勉強も頑張るし、申し分の無い子・・・あんなに小さかったあんたが・・・」



そして香樹がすみれの左手を握り締める・・・。



「ホントに立派な父親になった・・・」







祖母がそう言うと、すみれは座って香樹の目線に合わせ、笑顔で話し掛けた。





「香樹君。お父さんに、頑張れって・・・言ってあげよ?」





香樹は父親の苦しむ姿に驚き戸惑っている。




「先生が手を握っててあげるから怖くないよ?」



「・・・」



「・・・お兄ちゃんとお姉ちゃんが、後は香樹に任せた!!って・・・そう言ってるよ?」



「え・・・?」









それを聞いた瞬間、香樹の目が真っ直ぐに前を向いた。










「二人の分まで・・・香樹君がお父さんに頑張れ、ありがとうって・・・伝えてあげようよ」





「・・・うん」





香樹は返事をすると、ゆっくりと横たわる父親へと近づく。




その命の幸せを願い続けてくれた父親に向けてゆっくりと・・・。




ベッドの前まで来ると、祖母が座ったまま香樹の肩に手を回す。






「香樹・・・あんたのお父さんだよ?わかるかい?」










祖母の言葉に頷き、香樹は生まれて初めて父の名を呼んだ・・・。














「お父さん・・・」












その時・・・。











声が聞こえたのか、父親は震えながら力強く拳を握る―――。