「私なんかが偉そうな事言えないけど・・・みんな・・・そんなに自信なんて持ってないよ?」
「・・・」
「だから・・・・・・だからこそ人は人を好きになるの」
「え・・・?」
「みんな自信が無いから・・・恋をするんだよ?誰かを好きでいる自分を・・・嫌いな人なんていない・・・」
「・・・」
「人を好きになる事は、自分を好きになる事なんだよ?」
竜司の頬に涙が垂れる。
「そんな素晴らしい事だったら・・・自分に自信が無い事だって・・・別に悪くなくない?」
「・・・」
「人を好きになる資格があるって事だからさ・・・?」
「・・・はい」
「遥ちゃんに出逢って恋して・・・楽しかったり辛かったり・・・同じ時間を過ごして、いっぱい笑っていっぱい泣いて・・・それだけ好きになれたんだから・・・もっともっと自分にも自信持っていいんだよ?それだけで・・・素晴らしい事なんだから・・・何度も勇気出して、何度も頑張ったんでしょ?・・・だったら・・・恥じる事なんて一つも無い」
「・・・」
「その涙が・・・きっといつか笑顔に生まれ変わるから」
竜司はただ視線を一つに絞り、流れる涙を拭う事無く、すみれの言葉を体に染み込ませた。
自分への怒りが静かに優しさに包まれる。
竜司は黙ったまま、消えそうな自分をゆっくりと調整していった。
そしてその時、電源を切り忘れた武の携帯が鳴る。
すみれが応対すると、電話の相手は茂だった。
「・・・波川と申します・・・武君は・・・?」
「あっ・・・今、病院で検査を・・・」
「まさか・・・意識が・・・?」
「・・・さっき倒れて・・・」
「そうですか・・・どなたか武君の身内の方は・・・?」
すみれは祖母に電話を代わる。
「伊崎さん・・・ご無沙汰しております、波川です」
「あの時の刑事さん?」
「はい。・・・伊崎さん・・・大変申し上げにくいのですが・・・」
「・・・えぇ」
「・・・息子さんが先程、危篤状態に・・・」
