幸せという病気




午後十時二十分。






武と遥は揃って意識不明となる。

すみれは強く香樹を抱きしめ、目を瞑って奇跡を祈り続けた。


そして竜司は、その命が遥に助けられた事を悟り、ひどく自分の存在を責めたてる。


「なんで・・・俺が助かって遥が・・・もうたくさんだよ!!」


その声に驚きながらも、落ち着いてすみれは竜司に優しく声をかけた。



「竜司君・・・大丈夫だから・・・絶対に大丈夫」


「いつもいつも・・・遥は俺の先を歩いてる・・・」


「ん?」




竜司はどうしようも出来ない想いを訴える。




「あいつの前じゃ・・・俺なんてただのガキだよ・・・いつも支えてくれて、いつも助けてくれる・・・今日だってそうだ・・・」


「遥ちゃんが・・・助けてくれたの・・・?」


「・・・なんで・・・なんで俺じゃないんですか!!俺が死ねばよかったんだ・・・遥の代わりに俺みたいな奴が死ねばいいんだよ!!」


「バカッ!!」



その言葉を聞くと、すみれは耐え切れず竜司の頬を叩いた。
そして力強い声で語りかける。





「・・・どれだけ遥ちゃんが竜司君を助けたいって願ったか・・・」



「・・・」




「この竜司君の体のあったかさは・・・遥ちゃんの想いなんだよ!?」




「・・・」





「その強い想い・・・そんな言葉で踏みにじったらダメだよ!!!」






竜司は悲しみを背負いながら椅子にもたれかけた。

目の前の絶望と自分の不甲斐無さにその時、竜司は立っている気力さえも失っていた・・・。





「自信がありません・・・」




「え・・・?」




竜司が続ける。




「もう・・・自分に自信がありません・・・」





「竜司君・・・」





「こんなに・・・自分を嫌いになったの初めてです・・・」







そしてすみれは隣に腰掛け、竜司を精一杯に励ました。