幸せという病気



そして今度は、武達四人が暗い室内へと足を踏み入れ、呼吸器を付けて眠っている竜司に話し掛ける。


「・・・竜司?」


小刻みに機械音だけが小さく響き、武が名前を呼びかけると、祖母は竜司のその姿を見ていられない。


一度目の発作から急激に早い間隔で押し寄せた竜司の重い発作は、全員に絶望感を与え、死を大きく意識させた。



「おい・・・竜司・・・そろそろ目ぇ覚まさねぇと」



そして武のその言葉で、香樹が寝ている竜司のもとへとゆっくり歩み寄った。


「竜司兄ちゃん・・・?」

「香樹・・・竜司兄ちゃんに何か話してあげな?」


香樹は武にそう言われ小さく頷くと、伝えたかった言葉を香樹なりに必死に投げかける。



「竜司兄ちゃん・・・僕、頑張ったよ?」



三人はその言葉の意味を探る事も無く、香樹の言葉に耳を傾けた。





「・・・ちゃんと言えたからね?竜司兄ちゃんが頑張れって言ってくれたから・・・」





「・・・」








「だから・・・竜司兄ちゃんも頑張って??」







そして香樹の言葉は天へと昇り、力となって竜司へと降り注がれる。
竜司の心に眠っていた、『生きたい』という望みがその時、今までよりも増して、大きく膨張した。




またその頃、あゆみは香樹に貰った絵本を読んでいた。

母親があゆみに話し掛ける。


「あゆみ?何読んでるの?」

「香樹君に貰った絵本だよ~?」

「そっかぁ。じゃあたまにはお母さんが読んであげよっかっ」

「わぁ~いっ」





二人で読み出した物語は、やがて終盤に差し掛かった。




『幸せに暮らしている王子様とお姫様の前に、とても大きな魔物が現れ、二人にこう言いました』



―仲良く暮らす者達の仲を引き裂いてやろう―



『やがて魔物の魔法で、王子様は深い眠りについてしまいました。そして魔物は言いました。このまま目を覚ます事なく、王子は死ぬであろうと・・・』