「それを幸せっていうんだよ?」
「幸せ?」
「香樹だけじゃなく・・・ここにいるみんな・・・それからすみれ先生も、竜司も・・・世界中の人達がそう願って生きてるんだよ?」
「・・・」
「幸せになりたいって・・・」
香樹がコクッと頷くと、今度は遥が話し始めた。
「これからも・・・みんなで仲良く暮らそ?」
遥のその優しい笑みで、香樹の心は落ち着きを取り戻す。
「香樹ぃ~。心配だったかぁ~」
遥が香樹の髪の毛をくしゃくしゃにしてそう言うと、香樹は素直に頷きながら遥に抱きついた。
「よしよし・・・ごめんねぇ香樹・・・」
その時、すみれが駆けつける。
「武・・・竜司君は・・・?」
すみれが容態を伺うと、武は顔をしかめて首を横に振った。
やがて昏睡状態が続いたまま夜を迎える。
午後九時二十一分。
医師が治療室から出てきた。
するとすぐに武が医師に駆け寄る。
「あの・・・竜司は・・・」
「なんとも言えない状態です・・・幸せ病であるならおそらくこのまま・・・」
「でも・・・まだ二回目ですよ?倒れたの・・・」
「幸せ病は・・・人によって症状が異なります・・・突然亡くなる方もいれば、伊崎さんのように何度も発作で苦しみ続ける方もみえる・・・どうして人によって症状が違うのかは不明ですが・・・」
「・・・そうですか」
今度は遥が武に伺う。
「お兄ちゃん・・・」
「ん?」
「人によって違うのは・・・どうしてかな」
「わかんねぇけど・・・人によって幸せの形が違うように、それぞれ生き方も気持ちの持ち方も違う・・・」
「うん」
「幸せ病はそれを常に窺ってるはずだ」
「・・・」
「そうやって人の強さを試してるんだ・・・」
それを聞くと遥は一人、竜司の病室へと入る。
「竜司・・・」
遥が呼び掛ける。
