武は幼い頃の自分と、泣きながら懸命に訴える香樹の姿が重なり合う。
―――幸せってなんだろぉ・・・大人になったら・・・わかるかなぁ―――
あの頃・・・。
武がずっと願い感じていた事・・・。
その答えを・・・
香樹もまた、同じようにその小さい体で感じ、探し求めていた。
そして、ただ竜司の喜ぶ顔が見たくて・・・いつも良くしてくれる竜司にお礼が言いたくて・・・たくさんたくさん楽しい話がしたくて・・・。
ただそれだけなのに・・・。
そんな小さな幸せや願いさえも・・・。
幸せ病が引きちぎっていく――ー。
香樹の訴えに、遥と祖母はその時言葉が見つからない。
そして弟の気持ちを噛み締めると、武は優しく頭を撫で、話し始める。
「・・・香樹・・・楽しい事とか良い事があったら・・・その後なんて思う?」
「ん?」
「香樹だったら・・・なんて思う?」
「・・・これからももっと良い事があったらいいなぁって思う」
武はそれを聞くと、涙が込み上げてきた。
「お兄ちゃんも小さい頃・・・そうやって思ってた・・・」
「そうなの?」
「あぁ。今、こうやって大人になっても・・・」
「・・・」
「それは変わらない」
香樹は鼻をすすり、武を見つめる。
「香樹・・・それをなんていうか知ってるか?」
「なぁに?」
