幸せという病気

もうそこに、理由や理屈など存在しなかった。

遥もまた、武と同じように真実に気付き出すと、運命の軸がリセットされ、一度全てが崩壊する。


幸せを決めるのは間違いなく自分の想いだとその時、遥も武も改めて実感した。


やがて五分もすると、そこに祖母と香樹がようやく現れ、祖母が竜司の容態を心配する。

「遥、どうだい?竜司君・・・」

「うん・・・意識がないの・・・」

そして武は、祖母に手を繋がれながら怖がっている香樹を気遣った。


「香樹、兄ちゃんと外行こうか」


「・・・竜司兄ちゃんは?」


「竜司兄ちゃん、ちょっと風邪ひいたみたいで今寝てるんだよ」


「僕、竜司兄ちゃんとお話したい・・・」


香樹が下を向きそう言うと、武は座って頭を撫でながら話す。


「・・・今は寝かせてあげよ?」


「いつ起きるの?」


「・・・すぐ起きるから」


「すぐっていつ?」


「・・・とにかく今は兄ちゃんと外で遊ぼ?」


武が無理に外へ連れ出そうとすると、香樹は武の手を振り払った。



「嫌だ!!竜司兄ちゃんと遊ぶ!!」


「・・・香樹・・・どうした?」


香樹は目に涙を溜めながら声を張り上げる。




「僕、知ってるもん!!大人は良い事とか楽しい事があると死んじゃうって、みんなが言ってたもん!!どうしてみんな入院ばっかりなの!?」




「香樹・・・」





「竜司兄ちゃんもお姉ちゃんもお兄ちゃんも、みんな死んじゃうの!!?」








今まで・・・怖くて口に出せなかった。






そして香樹の体の中で、ずっと我慢していたものが・・・






その時、音を立てて爆発した・・・。