幸せという病気

「遥、おまえなら絶対に勝てる・・・」

「勝てるって・・・」

「俺達は生きているうちに何回も躓いて何回も傷つく・・・だけどその分何度も何度も感動してるはずだ」

「感動?」

「誰かに優しさ貰ったり、頑張りが報われた時とか、誰かを好きになった時とか・・・」

「・・・」

「おまえならわかるだろ、人一倍その感動・・・今さ、すみれのお腹の中に赤ちゃんがいるんだ・・・初めてすみれにそれを聞いた時なんかすげぇ嬉しかったし感動した・・・」

「私も・・・嬉しかったよ?」

「どうして俺達はそうやって命に感動するか知ってるか?」

「・・・何なの?」

「泣いたり笑ったり・・・俺達も毎日頑張って生きてるからだよ・・・」

「・・・」

「不器用でも俺達もしっかり命を持ってる・・・だから嬉しくて涙が出るんだ・・・そうやって誰かの命に触れながら、知らないうちに自分達が生きてる事を喜んでるんだよ?・・・だからさ、おまえもその命・・・諦めちゃダメだよ」

「・・・でも・・・」

「遥。母さんのように最後まで強く生きなきゃ」








その時、遥の脳裏に母親の言葉が蘇る。

















――ずっとずっと遥を応援してるから――


















「おまえがそんな弱音ばっか言ってたら、母さん悲しむよ?」



それを聞くと、遥の中にもう一度勇気が湧き、そして強く自分を奮い立たせる。




「ごめん・・・私、約束したのに・・・」


「ん?」


「お母さんと約束したんだ・・・」


「なんて?」




「世界中の誰よりも、幸せに生きるって・・・」



「そっか・・・」



「私の幸せは・・・竜司そのものなんだぁ・・・」






「あぁ」









「だからホントは・・・絶対、死なせたくない」