一方、遥は救急車に同乗し、意識の無い竜司の手を取り話し掛ける。





「・・・逆になっちゃったね竜司・・・ごめんね?・・・私のせいでこんな病気に・・・」





遥の心はその時。





「・・・竜司・・・もし死んじゃっても・・・私もすぐに逝くから・・・」






絶望の波に流されながら・・・






ただ・・・。






「ずっと・・・一緒だからね・・・?」











諦めで覆いつくされていた――。










そして香樹は、あゆみの家の近くの交差点にいた。

その最後の曲がり角で、あゆみがお礼を言う。



「香樹君、ありがとぉ」

「ん~ん」

「あのね?・・・私・・・」


あゆみが淋しそうな顔を見せると、香樹は「どうしたの?」と心配して伺った。


「私のお父さんとお母さんね?・・・喧嘩ばっかりでね?私・・・」

「あゆみちゃん。泣きそうになったら絵本を読めばいいよ」

「えっ?」

「僕のお母さんは僕が小さい頃に、死んじゃっていないんだぁ・・・でも悲しい時は、お姉ちゃんがいつも本を読んでくれたの。で、いつも元気になったよ?」

「・・・うん」

「だからあゆみちゃんも」

「・・・」

「泣きそうになったら、僕のあげた本を読んで?」

「・・・うんっ。そうするっ!」





日が暮れかけ、二人がバイバイを言い合いながらそれぞれの家へ帰る頃、竜司は集中治療室で昏睡状態が続いていた。

駆けつけた武が、廊下に佇む遥に声を掛ける。