「・・・お父さんとお母さんが仲が悪いって・・・言ってた」

「・・・そぅ・・・なんでそれは知ってるの?」

「クラスで家族の絵を描く時にね?すみれ先生と話してたの・・・」

「そっかぁ」

それを聞き、竜司は香樹の優しさを尊重する。

「じゃぁ香樹ぃ。香樹はあゆみちゃんに何をしてあげたい?」

「ん?」

「もし、あゆみちゃんが困ってたら、何をしてあげたい?」

「・・・大丈夫だよってね?助けてあげたい」

「じゃあ香樹の持ってた絵本でもプレゼントしたらどーだ?」

「うん・・・」

「その時に言ってあげな?あゆみちゃんが困った時には、僕が助けてあげるよって」

「・・・言えるかな」

「男だろ?」

「うん・・・」

「武兄ちゃんも、多分同じ事すると思うぞ?」

「お兄ちゃんも?」

「あぁ。頑張れっ香樹!」

「うんっ。で、竜司兄ちゃんはぁ?」

「え?」

「お姉ちゃんになんて言うのぉ?」

「・・・何が良いと思う?」

「僕、わかんないよぉ」

「・・・お姉ちゃん、何が好き?」

「竜司兄ちゃんも全然知らないじゃん」

「まぁ・・・それは言いっこ無しじゃないか香樹君」

「あっ、お姉ちゃんねぇ、星が好きだよぉ?」

「星?」

「うんっ!僕、昔よく連れてってもらったもん。星を見よぉって」

「星かぁ・・・なるほど」





そして・・・。



「ねぇ香樹君っ、どうしてぇ?」

あゆみの質問に香樹は勇気を出して答える。

「・・・あのね?あゆみちゃんがね?困った時は・・・僕が助けてあげる・・・」

「・・・ホントに?」

「うんっ・・・」

「ありがとぉ・・・香樹君」


その絵本の渡されたタイミングは、あゆみにとってこれほどに無い嬉しいタイミングだった。

流れる時間の中で、互いの気持ちが同じタイミングで触れ合う時、そこには理屈では言い表せれない感情が生じる。

二人の作戦はうまく時間に乗り、ふわふわと空間に溶け、やがて好きな相手の気持ちに灯りをつけた。