その頃、伊崎家では電話口で祖母がもう一度、男の名前を確認する。






「あのっ・・・もう一度お名前頂戴出来ますか?」

「ライオードミュージックの澤木と申します」




そして祖母が電話を切る頃、すみれは遥にお礼を言いに来ていた。




「遥ちゃん、ありがとぉ」

「ん~ん、とんでもない。あ~結婚かぁ、憧れるなぁ」



すみれが礼を言うと、遥は武達二人を羨ましがり、その後すぐに笑顔で話し出す。



「お兄ちゃん、あぁ見えて良い人だからさっ」

「うん」

「あっ!結婚式は!?」

「え・・・でもそんな余裕・・・」

「せっかくだからやろうよ!」

「うん・・・そりゃぁ私は、やりたいけど・・・」

「じゃあやろうやろうっ!小さくてもいいじゃんっ」

そして一方の武に祖母から電話が入った。

「武かい?」

「おぅ、ばあちゃん。どうしたの」

「今、家に武宛に電話があってね?澤木って人から」

「澤木?」

「うん。ライオードミュージックだって」

その名前を聞き、武の心臓の鼓動が早くなる。

「・・・武?」

一瞬、声が途絶えた電話の向こうに祖母が問いかける
と、武は少し声を震わせて答えた。

「・・・ライオードっていやぁ・・・大手のレコード
会社だよ」

「え?」

「・・・で、なんて?」

「また掛け直すって」

「そっか。じゃあ今日休みだし、とりあえず家帰るよ」

そして遥の病室。

「でも武がやるって言うかなぁ結婚式なんて・・・あぁ見えてシャイじゃんね」

すみれがそう言うと、遥は冗談で切り替す。

「じゃあ・・・うちらと一緒にやるとか」

「竜司君と遥ちゃん?」

「そうっ・・・てかさ、うちらは一体どーなってんだろ、その辺・・・」

遥が苦笑いをすると、すみれは笑顔で答えた。