幸せという病気



「・・・遥は、俺が幸せにします・・・だって」

「あっちょっとっ!それ俺のメールでしょ!?」

「これ何気に恥ずかしいよねぇ竜司君」

「今、読むのはダメですよぉ~」



そして武は、笑いながら続ける。



「いや、これさぁ、俺が小さい頃に遥と約束した事とまったく一緒でさぁ」

「え?」

「だからなんか笑っちまった」

「・・・はぁ」

「ちなみに香樹の将来の夢も・・・遥を幸せにしてあげたいだったなぁ」

「・・・はい」

「小さい頃さぁ、親に叱られて外に出されて・・・そしたら遥が傍に来て、なんか二人で色々喋った思い出があるんだよ」







お兄ちゃん・・・

遥は中に入ってな?寒いから・・・

嫌だ・・・

ホントにすぐ泣くなぁ遥は。お母さんまだ怒ってた?

遥がホントの事言う・・・

いいっていいってぇ。遥はお兄ちゃんが守ってやるからなっ

どうして?

そりゃぁ・・・お兄ちゃんだから。遥は女の子だから幸せにならなきゃいけないんだってさっ。お母さんがそう言ってた。

お兄ちゃんは?

お兄ちゃんは男だから、女の子を守るんだよ?

ふ~ん。お兄ちゃん。幸せってなぁに?

・・・幸せってのは・・・ん~・・・なんだろぉ?

お兄ちゃんでもわからないのぉ?

・・・でも、いい事なんだよ?幸せって。遥は、お兄ちゃんが幸せにしてあげるよっ。

わぁ~い







「竜司・・・」

「はい」

「全部、おまえに譲る」

「え?」

「生きて、生きて・・・おまえが遥を幸せにしてやってくれ」

「・・・武さん・・・」

「おまえにしか出来ねぇから」

「・・・」

「あいつを・・・頼むよ」

「はい」







武の中で、幼い頃の遥との思い出が駆け回り、やがてそれは笑顔で消えていった。