「あっもしもしお兄ちゃん?」
「何?なんかあったの?」
武が心配すると、遥は突然前触れも無く切り出した。
「すみれさんの家の近くに公園あるよねぇ?」
「えぇ?何の話?」
「あのね、そこの公園に忘れ物しちゃって・・・」
「・・・何を?」
「大事な物」
「だから何?それ」
「だから大事な物だってば」
「で・・・何なの?」
「見てきて欲しいの。あるかどうか」
「無いんじゃない?」
「ちょっと。話終わっちゃうじゃん」
「俺、明日も仕事なんだけど・・・」
「病人の言う事が聞けないの?」
「俺も病人だってば」
「・・・とにかく!!そこ行って見てきて」
「だから何があんの。すみれに頼めよぉ、近いんだし」
「すみれさんは・・・寝てるみたいだし」
「もぉ~。明日じゃダメなの?」
「ダメだから今電話してるんでしょ?」
「・・・じゃあ行くよぉ・・・」
話が成立したところで遥は電話を切り、その後、竜司の部屋をノックする。
「・・・竜司ぃ」
「あれ?遥、寝たんじゃなかったの?」
「さっきすみれさんが来てくれたの」
「え?こんな時間に?」
「心配して来てくれたんだよ?」
そう言い、遥はベッドに腰掛けると、竜司にしがみついた。
「遥?一人で寝るの淋しくなっちゃった?」
竜司の問いかけに遥はコクッと頷き、温かなその腕で抱き締められる。
一方の竜司は、その存在の全てを包み込むようにゆっくりと続けた。
