幸せという病気




「お兄ちゃんもきっと・・・それを望んでる・・・」




「・・・」




「生まれてきちゃいけない子供なんていない・・・例え、その先何が待ってても・・・」




「・・・うん・・・」




「私は・・・お父さんとお母さんに・・・ホントに感謝してるんだぁ。お母さんが死ぬ前に・・・最後に言ってあげたかった言葉があるの・・・結局言えなかったんだけど・・・」




「・・・なんて?」




「・・・産んでくれてありがとうって・・・」




「・・・遥ちゃん・・・」




「へへっ・・・ありきたりだしなんか恥ずかしいけどさっ・・・最後はもうそれしか・・・」




「・・・」




「・・・この子も・・・お母さんに早く会いたいって・・・そう思ってるはずだよ?」




「・・・うん」




「産んでくれてありがとうって・・・そう・・・早く泣いて表現したがってるはず・・・」








遥の言葉は、遠い彼方へと響き、やがてすみれの中に宿る子供の命と共鳴する。


それは一層強く光り、すみれの母性に宿った。
また、女性としての愛が、強くすみれを生まれ変わらせる。


そして遥に礼を言い、すみれは病院を出て行った。


遥は、すみれを見送った後、武に電話を掛ける。