第三章 悲劇の序章



次の日、武はいつものように会社へ出勤する。

ただ、この日から何かが変わり始め、武はあの時の茂の言葉がひっかかったまま生活していた。

そしてその日の夕方。

遥もいつものように放課後の教室で会話をしていた。


梅雨だというのにカラカラに晴れたその日、気温は六月中旬にも関わらず、三十六度にまで達する。

この所、日本列島は異常気象に見舞われ、そんな高温な日もあれば二十度にも達しない日もある。


「変な天気だよねぇ、まぁ今日はカラオケだからあんまり関係ないかっ」


時計がちょうど四時を指したその時だった。






ゴォォォォ―――!!








「何!?」








「地震だ!!」








ドドドドドドドド!! 








「キャー!!」








空がひっくり返るような音と振動で、遥は一瞬何が起こったのかわからない。

教室中、机や椅子が散乱し、天井からはライトが落ちた。

そして揺れが少しおさまると、周りがザワザワしだす。



「・・・優、大丈夫?・・・奈美?」



遥が机に捕まりながら周りに声をかけると、隣の席の奈美が「大丈夫」だと返事をした。

遥は奈美の声に安心しながら、返事の無い優を呼ぶ。


「優?ねぇ・・・優、大丈夫?」

「遥ぁ・・・痛ぃ・・・」


優は頭を強く打ち、腕からも血を流していたが、かろうじて意識ははっきりしていた。

担任が生徒全員に声を掛ける。


「みんな大丈夫か!?」


「先生・・・みんな怪我してるよ・・・」




辺り一面ぐちゃぐちゃだった・・・。


優をはじめ、多くの生徒が落ちてきたものや倒れたもので怪我を負い、そして街では瓦礫が散乱し、電車などの交通機関はストップした。

政府は以前から耐震強化を行っていたが、遅れていた工事箇所は全て崩壊してしまう。