「・・・すみれだけど・・・入ってもいい?」
「どうぞ~」
ドアを開けると、遥は普段のようにすみれを中に招き入れる。
「さっき電話したんだよ~?すみれさんっ」
「えっ?」
「ほらっ、病院から着信なかった?」
「・・・あれって・・・遥ちゃん?」
「うんっ。ごめん・・・忙しかった?」
それを聞くと、すみれは安堵で自然と涙が込み上げてきた。
遥がそんなすみれを気遣う。
「あれ?・・・すみれさん?どうしたの?」
「ごめん・・・私・・・」
「何かあった?」
「私・・・逃げてばっかり・・・」
「ん?」
すみれはそのまま椅子に腰掛け、落胆した顔で続ける。
「武からも・・・病気からも逃げて・・・赤ちゃんまで・・・」
「赤ちゃん?」
「今、お腹に・・・いるの・・・赤ちゃん」
「・・・やっぱりかぁ」
遥の返しに、すみれは少し驚き、聞き返した。
「・・・やっぱ知ってた?」
「ん~ん。夢を見たの」
「夢?」
「元気な赤ちゃんがね?キャッキャッて笑ってる夢」
「・・・」
「でも・・・私の子供じゃなさそうだし、すみれさんかなぁって」
「・・・それだけ?」
「うん。あっ、よくわかんないよね・・・?」
遥が照れながらそう言うと、すみれは心の中で子供の笑った顔を想像する。
