幸せという病気


一方、発信元の病院では、繋がらなかった電話を切り、病室へ戻る遥の姿があった。

部屋に帰り、電話が繋がらなかった事を、待っていた竜司に報告すると、その後、窓の外を眺めながら小さく呟く。


「なんか・・・淋しいなぁ~・・・」


それを聞き、竜司は遥の頭をポンポンと優しく撫で、電話ですみれに何を話そうとしたのかを尋ねた。


「すみれさんに何の用事だったの?」


「ん~・・・お兄ちゃんを宜しくって・・・言おうと思ってさっ」


「そぅ・・・」


「すみれさんは・・・ホントのお姉ちゃんみたいで・・・優しくて綺麗で・・・私、大好き」


「うん」




その後、遥は顔を強張らせて話す。




「でも・・・体、大丈夫かなぁ、すみれさん」


「え?」


「・・・ホントは電話でそれを聞こうと思って」


「すみれさん・・・もしかして・・・」


「ん~ん。わかんないけど・・・なんか心配になって・・・」




そして一方のすみれも、病院にいる三人の安否が心配で仕方がなかった。

ようやく病院に着くと、急ぎ足で武の病室へと向かう。

だが、辿り着いたその病室には、入院しているはずの武の名前が書かれていなかった。






「・・・なんで・・・?」






その時、すみれは人生で初めて、とても大きな後悔に襲われる。

そのまま凍りついた顔で遥の病室に向かい、その病室のドアをノックすると、中からいつも通りの遥の声が聞こえた。