「シチュエーションが何だってぇ?」
「あっお姉ちゃんっ!」
「遥ぁ!なんだよいるならいるって言えよぉびっくりしたぁ・・・」
「いる」
「全然おせぇ」
そして遥が質問する。
「何の話だったの?臭いとか、喧嘩とか」
「まぁ・・・そんなとこポイントじゃないけどね・・・?」
竜司が答えると、香樹が目で竜司に「言うな」と訴える。
「OK、OK・・・いやっ、ちょっと男と男の大事な話さぁ・・・ねぇ?香樹」
「うんっ・・・」
「へぇ~」
遥は怪しんだ目で竜司を見た。
それに対し、竜司はごまかす。
「・・・いやぁ~今日はいい天気だなぁしかし」
「ごまかし方が古い」
これじゃダメだと悟ったか、香樹はキャッチボールを竜司に提案する。
「・・・竜司兄ちゃん!キャッチボールまだぁ?・・・」
「・・・おぅ!キャッチボールしよぉ!!」
そうして、ウキウキしながら二人はキャッチボールの為、病院の庭へと向かった。
なんとかバレずに済んだと一安心しながら・・・。
しかし、遥は解っていた。
「香樹が恋ねぇ~・・・・」
そう言い、空を見上げると、幼い頃の自分の恋と茜を思い出す。
空はあの時と同じように、綺麗に青く澄み渡り、今でも尚、遥を応援し続けていた。
やがて夜になると雨が降りだし、そして仕事を終えたすみれの携帯が鳴る。
液晶を見ると、武や遥が入院する病院名が表示され、すみれは一瞬、その着信を切ろうとする。
しかし電源ボタンを押せぬまま、二十秒ほど目を瞑り悩んでいると、やがて呼び出し音が止まった。
その瞬間すみれの胸中に、これまでにない不安と心配が込み上げる。
気付けば、そのまま家路とは反対方向の電車に乗り、病院へと向かっていた。
駆け巡る、嫌な胸騒ぎをなんとか押さえ、仕舞い込みながら・・・。
