幸せという病気


そして日が暮れ、午後七時五十三分。


竜司に引き続き、武は急なめまいに襲われる。


傍で遊んでいた香樹に、祖母を呼ぶよう伝えると、その後すぐに激しい痛みで意識を失くし畳に倒れた。


祖母が救急車を呼び、すみれに連絡が入る。

およそ三十分後、病院の待合室に着いたすみれは、落胆した祖母と香樹に話しかけた。



「武は・・・」

「・・・倒れた時に頭を打ったみたいだから・・・今はまだ意識が・・・」



そう祖母が答えると、すみれは不安と心配でその場に座り込む。


「すみれさん・・・大丈夫。この間みたいに、すぐにまた元気になる・・・」


「・・・そうですね」


祖母が元気付けようとそう言うと、すみれは長椅子に座りなおし、少し自分を落ち着かせた。

そんなすみれの顔を見て、香樹が小さな声で話し掛ける。


「お兄ちゃんは・・・?元気になる?」

「・・・もちろんっ。起きたら元気づけてあげようね?」


すみれは香樹にそう話しながら、頼るような香樹の不安顔に押され、恐る恐る武の病室へと入った。

そして竜司と遥は、次々と仕掛けてくる、その病気の恐ろしさに絶望する。

それは、二人にとって強い支えとなっていた武の、二度目の発作を目の当たりにし、変えられない現実を改めて思い知らされたからだった――。



午前六時十四分。



目が覚めた武は、看病をしながらそのまま眠ってしまったすみれに話し掛ける。



「すみれ・・・おはよ・・・」


「・・・武・・・大丈夫なの・・・?」


武の声ですみれは目を覚まし、その後すぐに体調を心配した。

すると反対に、武はすみれの体を気遣う。


「ありがと・・・こんなとこで寝たら・・・風邪ひいちゃうよ?」


「私の事より・・・まず自分だよ・・・」


「赤ちゃんにも・・・良くないだろ?」


「そうだけど・・・」


「俺なら・・・大丈夫だから」


「どう大丈夫なの・・・?」


「ん?」


「二回も倒れて・・・どう大丈夫なの!?」


すみれの少し力の入った涙声に一瞬、武は何も返せなかった。