幸せという病気

そして短い沈黙の後、昨日の発作の事実を切り出そうとすると、逆に遥が竜司に謝りだす。


「竜司・・・ごめんね・・・?」


突然の言葉に、竜司は一瞬たじろぎ、何故だと聞き返した。


「・・・怖い思いさせたよね・・・?ごめん・・・」


「・・・え・・・」


「付き合ってる子のそんなとこ・・・見たくないよね・・・」


「・・・そんなとこ?」


「・・・私、最後まで看取って欲しいなんて・・・思ってないからね?」


そう言い、下を向きながら遥は気持ちにほんの少しだけ力を入れる。


また、竜司はそれを聞くと、遥の全てを抱きしめたい衝動に駆られた。

間を空けず、遥は無理に自分を高め、明るい声で続ける。


「だからホントに無理して私の傍について無くても大丈夫っ」


「無理なんかしてないよ」


竜司がそれを否定すると、遥はゆっくりと首を横に振る。

そして、今度は持っている気持ちを全て開放させた。






「ん~ん、違うの・・・この世には見なくていいものもあるんだよ?」



「・・・なんだよそれ・・・」



「お願いだから・・・」



「・・・」







「お願いだから・・・逃げて・・・」








「・・・え?」








うまく聞きとれない程にその言葉は温かく包まれていて、ほんの一瞬、時が止まったようだった。








「竜司、ありがとぉ・・・」








遥は目に涙を溜め、それを見られないよう顔を背ける。








「もう・・・逃げてほしい」








その勇気の反動があまりにも強烈で、遥は竜司の左手の甲を自分の右手で覆った。








すぐに全ての気持ちと熱が伝わると、竜司は遥の愛に身震いする。

そして言葉では何も表すことが出来ず、遥の体を引き寄せ、思い切り抱き締めた。