幸せという病気

「・・・真っ暗なんです・・・俺、一人だけ、ずっとその空間に取り残されてて・・・」


「・・・怖そうだな」


「はい・・・あいつ・・・ずっと一人で怖かったんだなって・・・」


そう言うと、竜司は遥を思い、その苦味を噛み締める。


「・・・一人には・・・させたく無いんです・・・もう・・・一人で苦しんで欲しく無い・・・だから俺もこんな風になって・・・やっと同じ苦しみに立てて・・・なんか、嬉しいって言うかなんて言うか・・・」


「まぁ・・・嬉しいってのは言い過ぎだけどな」


「そうですね・・・こんな気持ち・・・感じた事も無くて」


「・・・ありがとな」


「・・・いえ・・・すいません、なんか・・・」


互いの気持ちを理解したいと思う、その時の二人の強く大きな優しさは、相手の強さ、弱さをどちらも否定しない事だった。


そして窓の外では太陽が、今日の空を遠慮無く、また、何にも憚れる事無く頂上を目指し始めていた。







四月十五日、午前九時三十四分。







現状の厳しい変化を皮肉るかのように、日差しが昨日と変わらぬ柔らかなぬくもりを、病院の屋上にいる竜司と遥へ与える。



「ねぇ竜司。桜、もうすぐ満開になるかなぁ?」


「ん~・・・毎年こんなもんだっけ?」


遥の問いに竜司は、自分の中での隠しきれない心の沈みに動揺する。


「早く満開にならないかなぁ」


「・・・うん、そうだね」


そしていつも交わしている何気ない会話に、遥は微妙なブレを感じた。


「・・・竜司?」


「・・・ん?」


「・・・大丈夫?」


遥は竜司の目を見ながら、その原因を確認する。

一方の竜司は、遥のその言葉に救われながら、一息ついて心を落ち着かせた。