幸せという病気



そして竜司の中で遥が鮮明に蘇った――。










「・・・あんた名前なんていうの?」

「伊崎 遥だけど・・・そんな事より病院へ行かな・・・」

「遥ちゃん、俺は大丈夫だから・・・そいつを運んでやってくれ・・・」

「でも・・・」

「いいから・・・こんなになってまで助けたんだから、このまま死なせちまったら意味がない・・・」







「動物好きなの?」

「・・・どうかな。好きって言えば好きなんかな」

「・・・そっかっ。でもいい人だねっ?あんなになって助けてあげられるなんてすごいよっ!優しいんだね」

「良い奴になりたくてやった事なら褒められて嬉しいだろうけどさ、俺は良い奴でもなんでもない。やっぱ痛いし、イライラするし。後悔もする。実際こうなるとなんで助けたのかなって思うよ・・・だいたい、人の目に見られて、当たり前にした事が『良い事』になっちまうなら見ないでほしかったな。あれは俺にとっちゃ優しさでもなんでもない。獣医として当たり前の事だから。仕事のせいだよ、職業病」

「ごめん・・・でも・・・それは優しさじゃないとか・・・違うよ・・・別に優しくしようとか、良い人って思われようとしたわけじゃなくても、私が昨日見たあなたは優しい人だった。優しいなぁって思った。でも私が勝手にそう感じちゃっただけなんだから自分を否定するような事言わなくてもいいよ・・・」