幸せという病気

そして今度は、帰ってきた遥に対して小さく言葉を投げた。



「素直なように見えて・・・素直じゃないって?やっぱ兄妹だなぁ・・・」


そう言い、武はタオルを持って風呂に向かう。

と、遥は以前に武に向けて言った言葉を思い出す。




《・・・お兄ちゃんさぁ・・・素直なように見えて素直じゃないよね・・・》



それを思い出すと、遥は文句を言うかのように小さく呟いた。



「別に・・・そうゆう事じゃ・・・」




そしてその頃竜司は、もう一度遥を探して、夜の街を走っていた。

その時、一人の女性と肩をぶつける。



「あ・・・すいません」


「・・・いえ」



一方、遥は・・・。

ベッドに横たわり、竜司との別れに泣いていた。

と、風呂上りの武がドアをノックする。


「入るぞー?」

「・・・うん」


急いで涙を拭き、遥は返事をした。


「あぁさっぱりした。おまえ今何考えてんの?」

「え?」

部屋に入るなり、遥の姿を見て唐突に武が質問する。


「竜司の事か?」

「・・・別に・・・」

「しかねぇじゃん」


武は笑って椅子に座った。


「何?・・・もう寝るけど・・・」


遥が武にそう言うと、武は今日の動物園について聞き出す。


「楽しかったか?動物園」

「・・・うん・・・まぁ・・・」

「竜司と行けばよかったじゃん」

「・・・なんで?」

「二人で行った方が楽しいだろ。付き合ってるんだしさ」

「・・・」

そして、遥は黙り込む。

五秒の沈黙の後、タオルで髪を拭きながら武は聞いた。

「・・・付き合ってねぇのか?」

「・・・別れた・・・」

「そっかぁ。これでおまえの幸せ病治るかもなぁ。よかったじゃん」

「・・・よかったって・・・」

「幸せじゃ無くなったから・・・よかったじゃん・・・」

「・・・」

「なんか俺、言ってる意味わかんねぇな・・・」

「・・・うん」