幸せという病気

そして竜司は、その後姿にかける言葉が見つからず、自分ではどうしようも出来ない現実を、ただその時は受け止めるしか無かった・・・。


一方の遥は、そのまま家へと戻り、「ただいま」の声に、香樹が笑顔で出迎える。

「香樹、ただいまぁ」

「おかえりっ!お姉ちゃん!」

その二人の声に気付いた祖母が玄関先に出てきた。

「・・・遥・・・病院は・・・?」

「・・・抜けて来ちゃった」

「・・・そうかい」


祖母は優しく頷き、遥を居間へと連れて行く。

と、何も発せず、武は寝転びながらテレビを見ていた。


「・・・お兄ちゃん・・・」

「・・・」

武は返事をしない。

「・・・怒ってる?」

「・・・」

「ごめんなさい」

「・・・」

香樹は遥に寄り添い、遥の手を掴んだ。

そして、しばらくすると武が口を開く。



「・・・竜司から電話が来たよ・・・」


「え?」


「さっきな・・・」


「・・・そう・・・」





遥が家に帰ってくる三十分前の事。




武の携帯が鳴った。


「どうした?竜司」


「・・・」


「おい・・・どうした?」


「・・・すいません・・・」


「・・・泣いてんのか?」


「・・・」


竜司は電話口で泣いていた。