「いやいや。ポップコーンやめてくんない?」
「いやぁ。ポップコーンってやっぱり良くない?・・・って?」
「おまえそんな性格だったっけ・・・」
「あっ。知らなかったぁ?」
「・・・気持ちわり・・・」
「武、なんか感じ変わったね」
すみれはスクリーンを見ながら、ポップコーンから話を遠ざける。
「・・・ん?・・・髪切ったからな」
すると武は、自分の髪を触りながら答える。
「ん~ん。そういう事じゃなくて・・・てか、いつまで鼻つまんでんの・・・やめなよそれ」
「あ・・・はい・・・」
今、ポップコーンの前では武はすみれに従うしかない。
続けてすみれが話す。
「なんかいい顔してる」
「あっ。わかってきたねぇすみれも」
「はいはい・・・」
すみれが適当に流すと武はふてくされたように、なんだよと聞き返す。
「なんか・・・色々と吹っ切れた顔になったよ?」
「・・・そうか?」
「うん。なんとなく」
「・・・まぁ・・・気付いたからな」
「え?」
「・・・自分の幸せってのに」
その一瞬、すみれは何も言えなかった。
そのまま映画が上映される。
二人は何も話さず、二時間弱の映画を鑑賞した。
静かに始まり・・・そして静かに終わって行く、悲しいラブストーリーを・・・。
