「なんだこれ」




「母さんの形見だ・・・遥にやってくれ」




「・・・自分であげればいいじゃん」




「・・・恥ずかしいだろ」




「意味わかんねぇ」





父親はそのままパトカーに乗り込み、遠く、家族からまた離れていった。












仕事づけで何も語らない、何も教えてくれない父親だった。




その父親は、最後に大きな手で子供達を抱き締め、何にも変えられない大きな愛を残して行った――。




次の日。


昨日の出来事の余韻を残した病室で、武は父親に貰った箱を遥に手渡す。


「遥にってさ」

「・・・私に?」

「自分で渡せばいいのによ・・・」

「・・・なんだろ」

「母さんの形見らしいよ?」

「え・・・」


箱を開けると、箱の中には綺麗な貝殻が入っていた。


「なんだこれ?」


武が箱の中を覗いて不思議がる。

すると遥はすぐに思い出した。


「・・・これ・・・」

「何?」


竜司が聞くと遥は微笑んで答える。





「小さい頃、私がお母さんにあげた貝だよ・・・?」





「・・・なんだあの親父・・・ガラに合わねぇ・・・」





言葉とは裏腹に、嬉しそうに武は呟いた。




「お父さんが持ってたんだ・・・」




その貝を見ながら、遥も嬉しそうに呟く。