「初めての家庭訪問で、この子の夢・・・読んだの覚えてますか?」
《ぼくのしょうらいのゆめは、おねえちゃんをまもって、しあわせにしてあげたいです。あとは、おにいちゃんのようにつよいだんなさんになることです。あとパイロットです》
遥はそれを思い出し、目に涙を溜める・・・。
「小さいながらに、この子はわかってます・・・遥さんの強い所、弱い所・・・それだけ遥さんを見てるんです・・・大事に思ってるんです・・・この子を抱き締めてあげられるのは、遥さんしかいないんですよ?」
力を無くし、遥はその場で崩れ落ちた。
武と竜司、担当医の三人は遥を安全な場所に連れ戻す。
そして香樹が泣いている遥に近寄り、幼い声で訴えかけた。
「お姉ちゃん。これ、ポチポチにあげるお花だよ?お姉ちゃんの分もあるよ?・・・だからみんな喧嘩しちゃ嫌だ・・・」
「・・・うん!!ごめんね香樹・・・ごめん・・・」
晴れた空の下、もう一度家族が幸せに繋がるように・・・。
小さな手で握られた、小さな花が、涙でキラキラと光っていた。
『大事なものは死を直視しなければわからない事もある。けれど、大事なものは、生きていなければ実感できない』
そして一息ついた武に、もう一つの悪い知らせが届いた。
今日、二回目の着信。
茂からだった。
