その夜・・・。



「そーだお兄ちゃん、明日香樹の先生が来るんだけど昼間家に居れるよね?」


遥が洗い物をしながら武に尋ねた。

野球中継を見ながら缶ビールを飲んでいた武は、明日の香樹の家庭訪問を思い出し、ビールを持つ手が止まる。



完全に忘れていた・・・。



遥は、武が明日の仕事の欠勤をとっていない事を聞くと、テーブルから身を乗り出し、驚きでテンションが高くなる。


「えっ!忘れてたって!だめだよ居なきゃ、来るよ先生!」


「えっ。ばぁちゃんは居ないの?明日の昼間」


「おばぁちゃん今日から町会旅行行ってるじゃん・・・」


遥が必死に言いつけると、武は祖母を頼りにする。

が、祖母は町内会の旅行で今日から家を空けていた。

武は背中を掻きながら、


「旅行とか行ってる場合じゃ・・・かい〜な」

「それも忘れてたの!?」


呆れたように遥はため息をつき、真剣に明日どうするかを考え出した。


「会社休めないしね・・・どうしよう」

「今、事務所に連絡すればなんとか・・・」


と言い、武は携帯を手に取り事務所に電話しようとした。

そしてそれを見て、横から遥が冷静に答える。


「ってかもう会社閉めてるでしょ・・・」

「・・・主任の携帯にね?」

「・・・てんぱってる?」

「全然・・・」

「大丈夫?」

「・・・もちろん」


武は気を取り直し、主任に電話をした。

七回ほどコール音がなり、少し疲れた声で主任が電話に出た。

武が申し訳なさそうに明日の事情を説明すると、




「・・・伊崎・・・俺、明日から有休だって言ったろぉちゃんと聞いてろ!!バーカたれがぁ」


「あ・・・すいません・・・そんな怒んなくたって・・・」





その後、なんとか武は明日一日休みをもらえた。


そして今度は、明日香樹の担任に出す饅頭がないことに気付く・・・。