あれ?――そういえば、彼女はあのとき何の仕事をしていると言っていたっけ。
 やっと疑問に思ったのは、彼女が夕飯を僕らの家で食べるようになって、一週間が経ったある日だった。


 彼女は、料理音痴の言葉の通り、全くもって料理ができなかった。
 目玉焼きは辛うじて作れるのだが、玉子焼きになると黒い物体になってしまう。オムライスのチキンライスが、この世の味になってくれない。インスタント麺が、何故か変な味になる。――まあ、最後のは賞味期限の問題だろうと思うが。
 そんな状態のため、食費提供という条件で、僕は夕飯を作ることになった。

 フライパンで色鮮やかなパプリカを炒めながら、先ほどの疑問を解決するべく頭を働かせた。けれど、あのときの記憶は、ぶんぶん体を揺さぶられたことが頭を占めていて、疑問は解決しない。
 よし、今日の夕飯のときに聞こう。そう決めて、僕はフライパンの中に豚肉を入れた。


 今日の夕飯の、30分前のことだ。