真一は、僕の笑顔を気持ち悪いと一刀両断し、顔をぐっと寄せて問い詰めてきた。クォーターの真一の、深いマリンブルーが鋭く僕の目を見据える。沈黙の戦いは、始まる前から勝敗は決まっていた。

「分かった。こーさん! 降参でーす」

「わーい。勝った!」

 白旗を上げたのは僕だった。勝ったと喜ぶ真一だが、あの目力を前にして勝てる奴は、なかなかいないと思う。
 敗者は素直に教えた。お隣に越してきた彼女のことを。そして、その人が夕飯を食べに家に来ることになったことまでを。

「へえ。だからツバキ、上機嫌だったんだー」

「満足して頂けましたか? 陛下」

「おう。満足したぞ」

 陛下に満足して頂けたので、僕は安堵した。とりあえず、あのことは伏せられたようだ。
 丁度、昼休みが終わったので、朝食の魔法はすっかり解けてしまった。またいつもの気だるさに包まれ、僕はとりあえず夕飯のメニューを考えることにした。