「失敬な!」

 そう心の声を大にして訴えたら、我が親友は呆れたように言葉を返した。

「いや、お前が笑顔って何か起きそうなんだもん」

「酷いぞ。名波真一!」

「お前こそ。親友をフルネームで呼び捨てすんなよ」

 僕のことをまるで変態をみるかのように見るくせに、わざと他人行儀に呼び捨てするのを咎めるとは小さい男め!
 いや、それは本当に冗談なのだけど。まあ、ただの馴れ合いだと分かっているから、僕は真一をフルネームで呼べるのだ。

「まあ、良いじゃんか。減らない減らない」

「気持ちが減る」

 そう言いながらも笑顔だから、真一は分かりやすい。今の同年代は分かりにくいのばっかりだから、真一みたいなやつは貴重だと思う。
 「ところで」と、真一は話の流れをぶった切り、突然逆流にした。

「何かあったんだ?」

「何だよ。その疑問符は一応付けといたよ。みたいな言い方は」

「だって、気持ち悪い笑顔だもん」